くしゃっと表情が崩れて、笑うと目が細くなる。
そんな、優しい笑顔。
「片付けはするけど掃除は嫌い、って矛盾してない?」
ケトルから、グツグツと鳴り始めた沸騰の合図。
加熱するのをやめて、響がカップ麺の蓋を開ける。
「んー‥、整理整頓はヤじゃないけど、部屋自体の汚れを綺麗にするとかは得意じゃないかも」
「ふーん」
お湯が注がれ、真っ白な湯気が舞い上がる。
あとは完成まで、数分待つだけ。
2つのカップ麺を手にした響に続くよう、あたしはキッチンを出た。
テーブルに置かれたのは、料理と呼べるか謎のお昼ご飯と、黒色のお箸と割り箸。
ここに住むなら、自分専用のお箸も必要になるかな。
毎回割り箸を使うのも、ゴミが出ちゃうし面倒だ。
「持ってきたもの、一度広げてもいい?」
座布団を避けて、直接床に座る。
ひんやりと冷たい床が、心地良かった。
帰ってきてすぐに響がつけたのであろうクーラーが、ゴーゴーと小さな音を立てていた。
「あぁ、どうぞ」
テーブル脇にある、ずっと響が運んでくれていたキャリーバッグを自分の前に寝かせる。


