ホストの飼い猫になりました。




賑やかな大通りを抜けて、裏道のような場所まで来る。

さっきよりも、人通りの少ない道。


キャリーバッグのガラガラという音が、大きくなる。



汗をハンカチで拭う若い女性。

二匹の犬をリードに繋いで、散歩をさせている中年の男性。

ケータイをいじりながら、ダルそうに歩く女子高生。

買い物袋をカゴに入れて、自転車にまたがるおばさん。

小さい男の子と、手を繋いで歩くお母さん。



……いや、お母さんじゃないかもしれない。



ふと、頭の隅っこにそんな予想が過ぎる。

世の中、結婚と同じスピードで離婚する夫婦だっているんだもの。


一口でお母さん……しかも、本当の母親だと言い切ってしまうには難しすぎる。


ひょっとしたら、保護者は親戚の人かもしれない。

はたまた、子どものほうが里子かもしれない。



「なんか気になる?」



じろじろと辺りを見回していると、響が不思議そうに声をかけてきた。

隣へと視線を移す際、見えてきた景色に思わず質問で返してしまう。



「ねぇ、あれって公園?」

「あぁ、あれな、9月に取り壊されるんだよ」