「……」

しばしの沈黙。

驚いたように小夜を見つめる龍太郎。

『……』

スルリと三角絞めを解いた小夜は、立ち上がって制服についた埃を払い落とす。

…気弱で引っ込み思案な彼女が、何故こんな事をしたのか。

龍太郎には分からない。

そう、一生分からないだろう。

龍太郎が衝動的に小夜に殴りかかったように、小夜もまた龍太郎の弱音など聞きたくなくて、衝動的に唇を重ねたのだと。