毎夜、『見回り』と称して宿直室を出て行く小岩井。

雪娘とて、もう子供ではない。

その見回りが『天神学園敷地内のみに留まっていない』事は既に理解していた。

…まだ多くの生徒には知られていないが、小岩井は只の用務員ではない。

死神。

死者の魂を狩り、現世とは別の場所に導く存在。

時には魂の救済、時には悪しき魂魄の調伏。

まだ末席でしかないらしい死神の小岩井が、死神の中でも特に汚れ仕事…苛烈な悪霊達の調伏を引き受けている事までは知らずとも、何やら危険の伴う仕事をしている事は、雪娘とて薄々感づいていた。