小岩井 防人はその夜、天神地区にある高層ビルの屋上に立っていた。

天神地区に付喪神が出没し、人間に災いをもたらす。

そのような指令が地区長から与えられたからだ。

…深夜、生温い風が吹くビルの屋上から階下を見下ろす小岩井。

車のヘッドライトや、建物の灯りのみが閃き、街の殆どは闇に包まれている。

給水タンク、配管、配電盤などが縦横無尽に張り巡らされているビルの屋上。

いつものツナギ、安全靴姿のまま、小岩井は無表情にそれらを一瞥した。