彼女が家を勘当されてから、しばらくが経つ。

いまだ行き先は決まらず。

その間、小岩井は教頭から借りているこの宿直室を、雪ん子の寝床として提供していた。

「あ、あの、小岩井さんすみません…いつも小岩井さんのお部屋を取り上げてしまって…」

恐縮そうに言う雪ん子。

「そもそもこの部屋も自分の部屋ではありません…教頭にお借りしているだけですから…自分はあまり眠らなくても平気ですので、気にせずゆっくり休んで下さい…それに…」

音もなく立ち上がる小岩井。

「夜は夜で、自分にも仕事があります…この部屋はご自分の部屋だと思って…寛いで下さればいいのです…」