「太極拳ってのは肉体の鍛錬の効果もあるが、その真の目的は『己の気脈の流れを知る事』にあるんだ。ゆったりと流れるように体を動かし、精神を統一させ、体の流れ、筋肉の流れ、骨格の流れ、血流の流れ…そうやって内面へと意識を向けていき、最終的には自分の中を巡る『気脈』を知る…自在に『気脈』をコントロールする為の第一歩だ」

まさか龍太郎の口から、そんな理に適った説明を聞かされようとは。

「ま、老師…龍娘先生の受け売りなんだけどな」

だと思った。

しかし。

「…………」

知らず、月の表情に笑みが浮かんでいた。

見境無しに拳を振るい、ただ他人を殴れば強くなると考えていた愚か者が、内面に目を向けるようになった。

気脈だか何だかは分からないが、精神修養する事も強さに繋がるのだと、やっと理解した。

多分に龍娘の指導があるのだろうが。

その事が、何故だか月は嬉しく思う。