その月が、迷っていた。

(もっと強く!もっと強く!天神学園最強になりてぇ!)

聞こえてくる『心の声』は、紛う事なく丹下 龍太郎。

こんな事を年がら年中考えているのは、学園でも彼しかいない。

なのに、伝わってくる衣擦れの音、足音、気配。

そのどれもが、あまりにも穏やかで緩やか。

ガサツで、粗暴で、周囲の騒音や静けさを考慮しないスペシャルバカとは思えない、あまりにも緩慢な動きだった。