「おや…」

天神学園焼却炉。

小岩井は、男の姿に気付く。

「龍太郎さん…傷はまだ癒えていないでしょう?」

「ああ…」

ぎこちない足取りで、苦笑いを浮かべる龍太郎。

声がいつもより小さいのは、腹から声を出すと傷に響くからか。

頭に包帯を巻き、胸元からも包帯が覗いていた。

「保健委員長凄ぇわ、アイツ…まさか三日で出歩けるようになるとは思わなかったぜ…」

「普通刺されて三日で出歩こうとは思わないんですけれどね…」

小岩井胡乱な目。

「でよ…」

龍太郎は、片手に握り締めた封筒を小岩井に見せる。

タイマントーナメント優勝賞品、100万円相当の学食食券。

…あれは、今年度のものではない。

今年度の学食食券は、剣豪に贈呈されている筈だ。

ならばあれは…。

「佐倉の連中やら教頭から聞いたんだけど…小岩井さんも死神なんだって?」

「……」

「あ、いや、黙ってたの責めてる訳じゃねぇんだ、ただ、ひとつ頼まれて欲しくてよ…」

龍太郎はバツが悪そうに頭を掻く。

「同じ死神なら…白兎の君って知ってっか?去年の天神の卒業生なんだけどよ…」