紫苑side
院長に呼び出しを受けた。
部屋に入るとオセロが置いてあった。
律とやってたんだって、すぐにわかった。
院長は私を座らせると、少し真剣な顔になった。
「紫苑、最近の学校は楽しいか?」
「…全然…」
「律と一緒にいた方が楽しいか?」
「…うん…」
「律とは上手くやってるのか?」
「…曖昧な…関係…になった」
今日のことで話さなくなった。
いや、話せなくなった。
天海と一緒にいることは、律にとって実に不愉快なこと。
ものすごく…律は怒ってた。
悪いのは全部私だ。
「さっきな、律と話してたんだよ。そしたらな、律はお前をすごく心配してたぞ?」
「心配…?」
「そうだ。律はな、自分が紫苑を守らなきゃいけないんだって、そう言ってたぞ」
「…べつに、律に守ってもらわなくても、一人でなんとかする。律に負担をかけてるのは私だから」
「重荷になってると言うのか?」
「いつも迷惑かけてるから」
「律が迷惑だと言ったのか?」
「違う。私が思ってるだけ」
「…ときには〜甘えてみたらどうだ」
院長は私に何が言いたい。
どうして甘える必要がある。
甘えるなんて、余計迷惑がかかるし、それに気持ち悪い。
第一甘え方なんて知らない。
「嫌だ。気持ち悪い」
「紫苑は最近頑張ってるからなぁ」
「成績を落としたくないんだ」
「律に何か頼んだりすればいい。甘い物持って来てとか。これは甘えの一つさ」
「必要ない」
「そう言うな。少しは素直になりなさい」
「素直になったって、律にどう影響があるんだ」
「心を少しでいい、開いてみなさい。新しい何かが得られる筈さ」
「何もないね」
「紫苑、悩んでるなら、律自身に打ち明けるといいよ。彼なら、お前の力になるから」
「…帰る…」
私は、聞いてるのが辛かった。
自分が憐れになるから。
甘えるなんて方法、わからない知らない。
心を開く?
どうやって?
甘えて何になる?
心を開いて何になる?
私はわからない。
逆に負担がかかるに違いない。
無理だ…怖い…。
ドアノブに手を置いたとき、院長は私に言った。
その言葉の意味は、私はわからなかった。
“紫苑の理解者は近くにいる”


