「律、紫苑と一緒にいるならわかるだろ」

「何が?」

「紫苑はな、とっても臆病なんだ。人に本音を言いたくても、怖くて言えないんだ。」

「だからなんだよ…」

「紫苑が思ってることを、ちゃんと受け止めてやれば、紫苑は自分なりに心を開くさ」

「あいつの閉ざされた硬い扉なんて、簡単に開くと思ってんの?」

「任せろ!」



そう言って院長は、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。
任せろって…一体何すんだよ…。
部屋を出ようとしたとき、院長が言葉を言った。
その言葉は父親が言うような暖かい台詞だった。
俺は少し微笑んで部屋を後にした。



“随分大人になったな、律も紫苑も”