真人とほのかが一緒に暮らし始めてからもうすぐ1ヶ月が経とうとしている。


この期間で核心には触れていないもののお互いのことを徐々に知っていった。ほのかは何でも食べるので好き嫌いはないのかと思っていたが、実はにんじんが苦手。好物は真人の作るチョコレートとハンバーグ。寒がりで末端冷え性なので、真人はほのかのために湯タンポを買ってきた。そしてほのかはどきどき怖い夢を見て夜中に泣きながら目を覚ます。そんなときは真人がほのかの背中をさすって落ち着かせてやるのだ。


しかし、真人はほのかの過去については未だに触れていなかった。下手に聞いたらほのかを傷付けてしまうのではないかと思ったのだ。真人の中で、ほのかのことをもっと知りたいと言う気持ちは募っていくばかりだった。


「なあ、ほの。」


真人は親しみを込めてほのかのことを《ほの》と呼ぶようになった。


「ん?なぁに?」


洗濯物を畳んでいたほのかが真人の方に顔を向ける。


真人は堅苦しいからと、ほのかに敬語を止めるように頼んだ。ほのかも最初は渋々従っていたが、今は自然と真人と話せるようになった。


「あー。ん、何て言うか忘れた。ごめん。」


「ふふ。変な真人さん。」


本当は真人のことを名前で呼ぶように言ったのだが、こればかりは直らないようだ。


真人はほのかにほのか自身のことを尋ねようとして躊躇った。結局、何と切り出すか迷った末に言えず終いだ。


そんなことが何度か続いていた。