注意したというのは、たぶん、バスの中でうるさくしていて、おばあさんに席を変わらないことのことだろう。
「うん」
「そのとき思ったんだよね。かっこいいなって」
「ばあさんが立ってることは、分かってたんだけど。言い出せなかった…」
「…」
「なのに先輩は。オレたちのこと注意して、ばあさんを座らせて…」
「でも、そんなの当たり前ことだよ?」
あたしが言うと、黎くんは違うと首を横にふった。
「たしかに、当たり前のことかもしれない。だけど、簡単にできることじゃない…」
「…」
「ほとんどの人達が、見て見ぬふりをするのに、先輩はちがうだろ?」
「…」


