15分の恋。


注意したというのは、たぶん、バスの中でうるさくしていて、おばあさんに席を変わらないことのことだろう。

「うん」
「そのとき思ったんだよね。かっこいいなって」

「ばあさんが立ってることは、分かってたんだけど。言い出せなかった…」
「…」
「なのに先輩は。オレたちのこと注意して、ばあさんを座らせて…」
「でも、そんなの当たり前ことだよ?」

あたしが言うと、黎くんは違うと首を横にふった。

「たしかに、当たり前のことかもしれない。だけど、簡単にできることじゃない…」
「…」
「ほとんどの人達が、見て見ぬふりをするのに、先輩はちがうだろ?」
「…」