ぼーっと、つったっていると、黎くんが少し大きい声で、あたしを呼ぶ。
「ここ、空いてるんで先輩座ってください」
「え、いいよそんなっ」
ぶんぶんと顔を振ると、1人のおばあさんが立っている。
あたしは、おばあさんに足を向ける。
おばあさんの前まで行くと、手をとって、笑顔で話しかける。
「おばあさんっ、あそこの席空いてるんで、座ってください」
「いいのかい?」
「もちろんですっ」
おばあさんの手をとったまま、空いた席に歩き出す。
「ありがとうねぇ」
「いえ」
おばあさんが座ると、あたしは黎くんの手をとって、おばあさんが立っていた場所まで行く。


