「俺ん家は、みんなバラバラだった。

 親父もお袋も、俺も。

 でも、俺と親父はそうでもなかった。

 お袋はだいたい一人だったけど。
 あいつはいつも、好き勝手やってたから」

最後らへんだけ少しの声が強くなったのは、気のせい、だろうか。

「んで、小6のときにてきとーなお袋に腹が立って、言い合いして、家を飛び出した」

「…」

「家を飛び出したのなんか、初めてだった。

 その日は、梅雨に入ったばっかの大雨で。

 追いかけて来るはずのないお袋が、名前を読んで…走ってきた」