ぼくは地図を広げ、けんめいに北をむいているヘアピンカーブをさがした。

 ああ、あった。これだ。

 ぼくは地図の上にえがかれた小さなカーブを人さし指で押さえた。ユーイチたちもぼくの指先を見つめる。
 おどろいたことに、地図を押さえているぼくの湯部先のすぐそばに天狐森はあった。

 なんだ、もうすぐじゃないか。この道って、すぐにまた大きくカーブして南にむかうんだ。天狐森はもうすぐだ。

 急に元気がもどってきた。
「あと少し。あと少し」
 だれからともなく、そんな言葉が自然にこぼれる。自転車のペダルをふむ足もかるい。
 ユーイチの焼けた顔に、はじける汗(あせ)。ふりかえると、弟のヒロアキとマサルは、しっとりぬれた前がみをひたいにはりつけて、あえぎながら自転車をこいでいた。