小さく丸いローソクたてに、はりがねを器用(きよう)に巻きつけ、もう一方のはしを真下に直角に曲げて取っ手にしたもの。正月のときにだけ神だなにそなえるものを改造したものだった。
 でもローソクたては全部で三つしかない。
「なんだよ、一つたりないじゃないか」
 ぼくが言うと、
「神だな用のローソクたて、家に三つしかなかったんだ。だからヒロアキとマサルの分はいっしょだ。ヒロアキがローソク持って、マサルはそばにくっついてればいい」
「なるほど」
 ぼくもリュックをおろし、中から方位磁石と地図を取り出した。
「天狐森まで行く途中(とちゅう)、道にまようことはないと思うけど、用心のためだ」
 地図で見ると、この校門から岬の高台の天狐森までは、直線距離(ちょくせんきょり)で、数キロのはずだが、道はまっすぐではない。ライオン岬は岩がかたく、たしか、ぼくが小学校に入る前に、高台までの道がやっと通った。でも、岩盤(がんぱん)を切り通すことはできなかった。そこで天狐森のある高台までは、そこを避(さ)けるために、同じところをくねくねと曲がりながらの山道となったのだ。

 2年生のときの遠足で岬まで行ったけど、途中の道のりはもうよくおぼえてない……

「行こう」
 ぼくの思いをさえぎるように、ユーイチが言った。