小屋のとびらを開け放(はな)ち、ぼくらは中に入った。この、そまつな小屋には窓がない。中がまっくらにならないように、とびらは少しだけ開けておいた。ユーイチはリュックをおろすと、マッチとローソクを取り出した。そして戸口の床の、三角のすじをたよりに火をつけた。火の灯(とも)されたローソクたてがまわされる。三つの小さなほのおが奥にむかってさしのべられると、いちばん奥に地下におりる階段が見えた。
 ぼくらは階段をおりてみることにした。ぼくとユーイチが先頭で、すぐ後にヒロアキとマサルがつづく。だれもが胸を高鳴らせているのがわかる。
 みじかい階段が終わると、どうくつの入り口が待っていた。玄関のドアくらいの大きさだ。ローソクは燃えている。酸素はあるようだ。どうくつは下へ下へとつづいていて、ぼくらをさそっているかのようだった。
 ぼくとユーイチは、いよいよだな、と言って、最初の一歩をふみ出した。石ころで歩きにくいどうくつのみちを進みはじめる。
 どうくつの道は、ときどき、ゆるくカーブしながらも、下へ下へとのびていた。
 ユーイチが、ときどき二人の弟をふりかえる。ぼくもふりかえってみる。ローソクを持ったヒロアキとマサルがぴったりくっついている。
 高台まで来る山道では同じところをぐるぐるとまわりつづけた。だから、このどうくつの道がどこへむかうのか、やはり気になる。ぼくは立ち止まって、ポケットにしのばせておいた磁石を取り出した。ローソクの火にかざして見ると、磁石の針は、今度はぼくらのうしろをさしている。
「この道、南におりていってるよ。岬の先にむかってるってわけだ」
 ぼくが言うと、ほの暗くゆれるローソクの火のむこうで、みんなの顔も明かりが灯(とも)ったようになった。