まわりを天狐森の木立にかこまれた神社の境内(けいだい)にぼくらは立つ。

 ああ、この小屋、おぼえてる。

 おぼろげな記憶がよみがえってくる。マサルが小屋のとびらに近よって行く。すぐ後にヒロアキもつづく。
 顔の高さの取っ手に手をかけて、マサルはふりかえる。
「あんちゃん、開けてもいい?」
 ユーイチは、やれよ、とだけ言う。戸をけんめいに引っぱるマサルの手の上に、ヒロアキが手を重ねる。

 このとびらのむこうって、どうなっているんだ?

 ぼくもユーイチも二、三歩前に出る。
 二人の手に引っぱられて、とびらは動く。

 いいぞ、引っぱれ。

 ぼくは2年生の遠足を思い出していた。そして、あのとき、できなかったつづきを、今、しようとしている、と思うと、胸が少しざわついた。
「やった」 
 ヒロアキとマサルは目をかがやかせる。