足並み揃って






「本当はずっと悔しかった。

あのトラックでやった営業。
お前から聞いた柳兄さんの話。

全部俺は冷静を装った。



それは全部お前の手前だったからだ

村田の相方の笹木だったからだ







だがそんな演技は
逆に自分を自分で苦しめた


同じ場面に直面するたびに
俺は何度も何度も心の中でわめいた

だからそんな日常から
脱却しようと思った

でも
俺には辞める勇気もなければ
"芸歴12年"という肩書きもあった

引き返すことも
壁を乗り越える力もない

何も無かったんだよ。






でも
12年間やってきた鬼頭は最後に

"たくさん苦労もしたし辛いこともあった。でも辞めたいと思うことは一度もなかった
それ以上に芸人が楽しかったからだ。"
と言った。


あいつは誰よりも
芸人の仕事が好きだった。
好きだったからあいつは辞めていった。


それをみて俺は悔しかった。
辞めていったことじゃなく
その思いにだ!


芸人を誇りに思う奴が辞めてゆき

芸人という仕事を誇りに思ってない俺が
劇場の舞台にたつ



本気で本気で本気で悔しかった!!!

アイツが語った負けの美学より
俺の気持ちの方が何倍も情けなかったからだ!

だからあれから
俺は何回も何回もネタをかいた!
デンセンブロックのためにお前のために
あいつを見返してやるために!


...情けないないだろ。
悔しかったんだ。信じられないくらいな..


そしてこの感情を
お前に言えなかったこともだ

悔しい感情より
恥ずかしい感情の方が強かったことも


情けなかった...」




そういうと笹木は
下を向き俺から目線をそらした。








中井「兄さん...」