「おーい、待てよ!亮太」


桜川芸術大学の構内。


新しい人生の始まりの季節。


キャンパスライフにわくわくする新入生が春の息吹薫る構内を賑やかに歩き回っている。


かくいうオレも美術学部の新入生。


知り合ったばかりの友人がオレの名を呼びながら走ってくる。


「亮太!お前足速すぎるぞ」


「わりぃ、勇介。早くいろんなサークル周りたくてさ」


「お。さては、可愛い子探してんだろ!?」


勇介はからかうようにオレの肩に腕を回してきた。


「ちげーよ。いくらお調子モンのオレでも、そんな簡単に忘れられねーよ」


「は?何?お前好きな子いるんだ!?なんだよ、大学じゃないよな?じゃあ、高校の時とか?」


思わず言ってしまって後悔した。


勇介はあまり観察してないようでいて、意外に鋭い。