オレはその日の美織が目に焼きついて離れなかった。


夕日に頬を茜色に染めながら、好きな奴の幸せを一心に願う美織の天使の表情。


オレは描いた。


唯一オレが人に得意だと言えるもの。


描くこと。


夕日に染まった美織の儚げな天使の表情をこの手で残しておきたかった。


オレは、一心不乱に描き続けた。



それから、3日後のことだった。


学校中で広まった噂。


「美織の家が火事になった」


オレはいてもたってもいられず、学校を抜け出し、美織が入院しているという病院へ走った。


「美織ちゃん!」


病室に入ると、美織は青白い顔でベッドに横たわっていた。


オレは頭が真っ白になり、美織のベッドに駆け寄る。


「美織ちゃん!死ぬな!」


周りの患者たちが何事かという顔でオレに注目する。


美織はゆっくりと目を開け、何が起こってるのかわからないという表情でオレを見つめた。


「美織・・・オレ、好きなんだ。君が須藤十夜を好きでも、好きなんだ。だから、君が幸せになるまで、オレは好きだと言い続ける。言わせてくれ」


オレは泣いていた。


沈黙が流れる。


美織はそっとベッドの横に膝まづいていたオレの手に触れ、「ありがとう」と言った。


「でも・・・ごめんなさい、美織は・・・」