日記はそんな感じでその日の出来事が簡潔に記されていて、そのどれもが教科書で見た有名な出来事だった。
この日記の主がこの時代を生きていたことが、はっきりと分かる。
そしてその出来事の合間にちらりちらりと、このヘンリーって人の日常が書き記されている。
「この日記に寄ると、どうやらヘンリーさんはアメリカ人じゃなく、イギリス人みたいだ。彼のお父さんの代で日本に渡り、綿織物の工場で成功を収めた人らしい。
日本には交易で来てたんだね。
家は元々裕福だったみたいだ」
零くんはぼやけた英字を指でなぞり、何とか単語を拾いながら訳してくれた。
零くん!すっごいよ!!
「綿織物……あ!産業革命だ!!」
「そうみたいだ。このときヘンリーさんは20歳。クロウさんの年齢ぐらいじゃない??」
そう言われて、
「はたち……う~ん…確かに。まぁそう言われればそうかも…」
この辺は自信がない。話し方は昭和~な感じがするけど、妙に若々しいときもあるし。年齢不詳な感じだ。
大体外国の人の年齢なんて分からないし。
「家族構成はお父さんと妹さんが二人。ただ妹さん二人は早くに嫁いで、家はヘンリーさんが継ぐみたいだ。
この辺りヘンリーさんは数人だけどお見合いをしている」
「へ、へぇ…そんなことまで書いてあるんだ…」
零くんは字を追っていた目をふっと止めると、僅かに目を細めて、そしておもむろにあたしを見てきた。
「な、何が書いてあるの……?」
恐る恐る聞くと、
「ここに……」と零くんは日記の一部を指で指し示しあたしに見せてくれた。
「?」
あたしは零くんが何を言いたいのか分からず、促されたまま日記を覗き込む。
その場所には
“Miss Yuuki”
と記されていた。



