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「変って?」


零くんは廊下を歩きながらあたしの方を振り返る。


まだ眠いのだろうか、語尾が変な風にかすれている。


「何もかもだよ。あのクロウさんだって、謎めいてるし」


「あの人が変なのは今にはじまったことじゃないよ」


変って……


クロウさんも零くんだけには言われたくないよ!


「変じゃなくて謎めいているってこと。大体あの人百年以上幽霊やってるって、何で成仏してないの?


おかしいじゃない。


成仏できないのは想い残りがあるからでしょ?」


そう、あたしも零くんも成仏できないのは―――





それぞれ想いが残ってるからだ。






百年以上の間、想いをうちに秘めてるって―――


そうそうできることじゃないよ。





よっぽど強く想ってるって―――ことじゃない?



クロウさんは一体どんな想いを抱えているのだろう。




「大体出るって、どうやって?この屋敷から出られないってことは実証済みじゃないか」


「でも出る方法はあるんだよ。ブリトニーさんだって…」


言いかけて口を噤んだ。