二人は気付いていないのか、足を止める事なくきょろきょろと視線を巡らせてあちこちを見渡している。


ギィ…


軋んだ木の音がして、あたしは顔を青くしたまま……それでも音の正体を知りたくて、恐る恐る顔を上げた。


塔のような高い建物の三角屋根の下に出窓があって、そこから





男の子が顔を出している。






びっくり―――した……




だっていきなり会えるとは思ってなかったから。




声も出せずにじっとその様子を凝視すると、男の子は出窓を開け放ち、窓の手すりに腕を乗せて、遠くを見ていた。





目を細めて眩しそうに空を眺め、頬杖をついて吐息をつく姿は妙に物憂げで、




やっぱり、どこか寂しそうだった。




あたしがその様子をじっと眺めていると、不意打ちに彼があたしの方を見下ろしてきた。



びっくりしたように目を開いて、あたしたちに気づくとぱっと窓の内側に引っ込む。






ま、待って!




ぎぃ…




「あ、開いたよ!明日未!」


あの彼に気付いていないのか、サヤカとアヤメが扉を外側に開く。


嘘……


だって開かない筈じゃ―――………




何で―――…





扉が乾いた音を立て、屋敷内に響き渡ったように思えて―――あたしの背中にゾクリと悪寒が走った。