夢かうつつか…零くんの声が遠くで聞こえて、切なげに揺れていた。
ううん。
零くんはあたしを守ってくれたよ。
階段から落ちるとき、あたしを庇おうとしてくれたよ?
庇おうとして、自分が死んじゃって―――
あたしの方こそ
ごめんね。
遠くの方で水音がする。
サラサラと流れるような…でも、地面を打ち付ける音で、その音が雨の音だと言うことに気付いた。
ぼんやりと灰色に滲んだ視界に、やっぱり霧のような雨が降っていた。
上品なピンク色の傘と、濃いネイビー色の傘が二つ並んでいて、それらの開いた傘にも雨粒がしとしとと落ちては、傘の表面を滑っていく。
傘の合間から二人の握られた手が見えた。
一人の腕は紺色の袖口。
見慣れたはずの―――零くんの制服だった。
もう一人は、白い長袖のカーディガン。
ほっそりと白くてきれいな手だ。
その手が、零くんに絡められた手から、そっと離れる。
まるでゆっくりと距離を取るかのように。
零くんはその白くて華奢な手を慌てて握り返す。
だけど、その白い手がやんわりと零くんの手を払った。



