ああ



あたしこんなところで、こんなタイミングで告白するつもりなんてなかったのに。


ちゃんと生き返って、ちゃんと生きてる零くんにきちんと伝えようと思ってたのに…





「結城さん―――……俺」






零くんが何か言いかけて、零くんはあたしの手を握り返してくれた。


あったかい零くんの指先があたしの手のひらを包み、


その拍子に


セラヴィが―――まるでスローモーションのように





落ちる。




あたしは何かを叫びながらも懸命に手を伸ばしたけれど、


零くんも何かを言って口を開いたのに、




ガシャンっ!!!




派手な音を立てて、無情にもセラヴィの香水瓶は





―――割れた。




琥珀色の液体がこぼれて、ガラスの破片がキラキラ……




嘘―――……



零くんが大切にしていた、セラヴィが…零くんが―――…


思わず割れた欠片に手を伸ばそうとするも、その手を零くんが力強い腕でぐいと引き寄せた。





「結城さん、いいよ




もう、いいんだ」





『大切なものだからこそ、無くなってしまえば想いを断ち切ることができると想ったから』



あのときのような瞳をしていたのに、その力はあのときと違って力強かった。





この感じは



あの階段―――…





あたしが落ちるときに助けようとしてくれた、あの力強い手。





セラヴィのボトルの破片がキラキラ輝きを放ちながら、そこから光が広がり




くすんだ色の屋敷が、かつての輝かしいほどの光を纏っていく。