ハッと目がさめて俺は頭を上げた。
深い睡眠は思ったより長くなくて、窓から見える景色にはオレンジと紫が混じる。
耳にはバスルームからの水音が聞こえてきた。
和香が『俺』を流し落としてるんだろうか?
そう思ったが、バスルームから出来た和香は制服姿で、
俺が起きて居る琴に気づいたのか小さく「あ・・・・・・」と声を上げた。
そして、
「お掃除、終わりました」
と俺に告げた。
「・・・・・・あの」
いつもの台詞。
思えばこいつが俺の名前を呼ぶことは無い。
俺の名前を尋ねたのは、
俺が『相沢翔汰』であることを確認したかっただけなんだと、
今さらながら理解した。


