コトリと俺の前に置かれるマグカップ。
何もいわず手にして口にする。
いつもと変わらないコーヒーの味。
けれど、
「・・・・・・お前、何考えてんの?」
いつもと違う台詞を吐くと、和香の「えっ?」と驚く小さな声が聞こえた。
「なんのために来るわけ?」
もう離婚したんだから母親を庇う必要も無い。
借金なんて知らないと投げてしまえばいい。
俺はこいつの引越し先なんて知らないんだから、バックレてしまえばいいのに。
和香は俺の質問に少し目を伏せて、
「お金は、返さないと・・・・・・。そういう約束でしたし」
なんて口にした。


