――最悪。
上書きしたらすべて消えるのかと思ったのに、
綺麗に忘れて性欲に溺れることができると思ったのに、
肌が違うと手が教える。
香りが違うと嗅覚が伝える。
身体が違うと拒絶する。
鮮明に彼女を思い出して、
すべてが違うと脳が認識する。
「何、やって・・・・・・」
小さく息を吐いて、
俺は鍵を差し込んだ。
ガチャリと回しドアを開ける。
綺麗に整頓された部屋。
その片隅でキラキラ光るのはガラスの破片。
俺はそれを手にとって。
「・・・・・・」
俺の指先に赤いものが浮かび上がる。
指先から流れる血は、
体から流れる血は、
止まっただろうか――?


