俺が『仕事』で家を出るとき、和香も一緒に家を出た。
「・・・・・・おい」
「はい」
ごく普通に俺の隣を歩く和香。
「お前、どうやって帰んの?」
「あ、送ってくださらなくても――」
「誰が送るかっ、馬鹿か?」
「・・・・・・すみません」
俺の声に体をすぼめて小さくそう漏らす。
っつーか、こいつ本気で馬鹿か?
「で?」
「あ、えっと、そこから電車に乗ります。駅からはバスに乗って」
「・・・・・・ふーん」
てっきり俺がタクシーに乗った後、こいつもタクシー捕まえてんのかと思った。
「本当はタクシーが便利なんですけど・・・・・・」
お金を少しでも貯めて返したいから、なんて台詞に思ったより馬鹿じゃないかと思ってみた。


