「あ、あの――」
「なんだっ!?」
俺の声に和香がビクッと身体全体を震わせる。
それで『なんでもないです』と言うと思ったのに・・・・・・。
「その、・・・・・・どうしたら、いいですか?」
「何が!?」
苛立たしげにそう言っても彼女は引くことなく、その場に立ち尽くしそっと後ろに視線を移した。
後ろにあるのは、
「流れなくなっちゃいました」
「は?」
便所。
流れなくって――。
「・・・・・・何やった?」
洋式の便器になみなみと溜まった水。
「えっと、雑巾が汚れちゃったんでそのまま」
「流したのか!?」
声を荒げてそう言うと、肩をビクッと揺らして、
「・・・・・・ダメ、ですか?」
なんて――
「――馬鹿かっ!?」
「すっ、すみません!!」
謝られてもどうにかなるわけじゃなく、
「それじゃ、次からは気をつけてくださいね」
「・・・・・・ども」
『水の100当番』のお世話になることに。
「じゃ、2万千円になります」
「・・・・・・」
なんで、俺が払ってんだ?


