ガタンと席を立ち、大声で言った。

「かっ彼女のフリ?!」

周りの客なんてお構い無しである。

陽は少しだけ縮こまり、コクリと頷いた。
両手の指先を重ねて何か言おうとしていた。

「うん・・・。花菜は親友だし、仲良いからさ。」

花菜は腕組をして座り、うーんと唸った。
数秒後、ぱっと陽の方を見て困った顔をした。

「そりゃさ、陽は幼馴染だし親友だし。協力したいとは思うよ?」

陽はまたもじもじした様子で「駄目か?」と言わんばかりに目で訴えてきた。

花菜もそれを見てうっとなった。

「・・・陽は、私に彼女のフリをさせて何がしたいの?」
「元カノを取り戻したい。」

余りにも真剣な表情だったため、花菜は負けたというように肩をすくめた。

「分かった。陽がそんなに真剣だったら、私は何も言わないよ。」

まるで、独り立ちをしたいと言う息子に母が言う言葉のようだった。