道中、風神威士との空気は悪いものではなかった。

玲のクラスの担任は、プライドが無駄に高く性格が悪いこと。
家庭科教師は元三ッ星レストランの主任を務めていたこと。
生徒会役員のちょっとしたおかしな話。

私は聞き役に徹していたが、途中言葉を被せてみたりと共に笑った。

寮に戻る私と、学園へ行く彼。
道の終わりが見えた頃には、別れを惜しく思っている自分がいた。

テンポよく続いていた話が止んだ。

どうしたのか。

隣の幾分高い位置にある顔を見上げると、ばちんと目が合った。
烏滸がましくも、まだこうして話していたいと思ったことに気付かれたのか。
緊張していると、彼は思い出したように言う。

「……俺はよくあそこに行く。ほとんど人は来ないし、親衛隊の心配も要らない」

だから、と。

「いつでも好きなときに来ればいい。……また話そう」

「はい……!」

願ってもない誘いの言葉に、私は一も二もなく頷いた。