ついでに。

「あの橙頭にも言ってかせてほしいものです」

思い浮かべたのは、先日の食堂でのこと。
そのせいで彼の親衛隊に呼び出され、運が悪ければリンチにあうところだった。
親衛隊の目的は勿論、憧れのあの人(橙頭の生徒会会計、黄金井朔弥)に近付く者を制裁すること。

「………首に縄付けておく」

「会長ともあろうものが、殺人はよくないですよ」

「締めはしないさ、ただちょっとお仕置きするだけだ。……っと、もうこんな時間か」

風神威士は右腕にはめている時計に目を落とし、ひとりごちた。
時計を持っていない私は、彼のそれを盗み見た。

6時を半分ほど回ったところだった。

彼はテーブルの上にある学校指定の鞄を手にする。

「俺はもう行くが、君はどうする?」

私は少し考えて。

「僕も失礼します。この格好で学校には行けませんから」

自信のジャージを示して言えば、彼はフッと笑う。

「じゃあ、君がよければ途中まで一緒に行こう」

私は迷うことなく頷いた。