表面では友好的に。
玲は誰にでも分け隔てなく優しく接するから。
取り敢えず笑顔を貼り付け、相手の出方を伺う。

しかし、考えてみれば私は選択を誤ったかもしれない。

奴は玲を追い回し、多大な迷惑をかけた筆頭と聞く。
玲は怖がって一目散に逃げ出すのでは。
今更後には引けない。
下手な行動は不審に繋がる。

「……すまなかった」

だが、そんな心配も杞憂に終わる。
風神威士が突拍子もないことを言い出し、同時に頭を下げた。

いきなりのことで理解が追い付かない。
やっとのことで声を絞り出す。

「何に頭を下げてるんですか」

「俺達が達富を執拗に追ったこと。勿論、今言うのは違うってことはわかっている。俺の自己満足でしかないことも。………達富に謝っておきたかった」

それは、痛いほど後悔している声色で、反省していることが滲み出ていた。

私は達富玲ではないから『許す』なんて言葉は言えない。
そして。

「もう、二度と追い回すような真似はやめていただきたい」

「ああ、約束するよ」

玲が以後平和に過ごすための約束を取り付けたことを許してほしい。