結構な時間寝ていた気がする。
この車は動いていても、車内に音を発生させることも、揺れを伝えることもない。
寝転んでまぶたが閉じた今の状態では、車の動きはわからなかった。

「ねえ」

「何かご用でしょうか」

すぐに返事をくれた運転手に問いかける。

「今どのくらい?」

「先ほど学園の門を越えたところです。あと30分程で到着しますよ」

となると、3時間近く眠っていたことになる。
どおりで、目覚めがすっきりしているはずだ。

身体を起こし、腕をあげて伸ばすなど軽い運動をしてから、目を擦り、開ける。
車窓から見えたのはたくさんの木だった。

そういえば、達富学園は山の中に建ってるんだっけと今更ながらに思い出す。
目を閉じて、記憶の中の地図を引っ張りだすと、まぶたの裏に浮かぶのはこの辺りの地形。