広すぎる道から入ったせいか、一瞬狭い道だと錯覚しかけたが、実際は住宅街にある道と大差無い。
ここに来て、規格外の大きさのものばかりを目にしすぎたせいか、感覚が狂いかけていた。
一般常識を奪われる学園怖い。

左右は木々の緑。
マイナスイオンを浴びている気がして心が和む。
今度、優希を誘って来たいな。
そう考えるだけで楽しくなり、頬が緩んだ。

やがて一本道の木々の間を抜けた。
開けたそこにあるのは、緑に赤い模様の散ったアーチと壁。
周りにはレンガ造りの花壇がいくつか散らばり、かわいらしい花を咲かせていた。

アーチと壁の細部が見れるところまで近付けば、それらは薔薇でできていることがわかる。
ガーデニング師は素晴らしい腕を持っている。

アーチを潜って中を見ると、そこはバラ園だった。
赤だけでなく、白、黄色、橙、青なんてのもある。
所々に上品な造りの東屋があり、そのうちのひとつに長身の人影を見つけた。

ここに来るまで誰ともすれ違わなかった。
まさかここで人に会うとは。

こんな早い時間に、こんな奥まった場所に来る人は誰だろう。
興味が湧く。

一歩ずつ、足音を立てずに近付くと、人影は振り向き私の存在に気付いた。