目が覚めると、そこは、最近暮らし始めたばかりの玲の寮部屋だった。
室内は明るく、ぼんやりと朝だなと思う。
枕元にある目覚まし時計を見ると、短針は5と6の間を指していた。
朝日の直撃に加え、昨日は早くに夢の住人になったせいか、眠気はない。
無理に二度寝をする気分にもなれなかった。

この時間は、『familiar』のメンバーと騒いでいた頃か。
懐かしいな。

今から出向くのにも無理があり、電話するのも億劫だ。

まあいい。
ちょっとその辺ぶらついてこよう。

思い立ったが吉日とばかりに起き上がり、布団を軽く整えてから部屋を出る。
薄暗い共同スペースを抜けて、履きなれたスニーカーに足をいれ、戸を開けた。

人気のないひんやりとした廊下を通り、無人のいやに広いエレベーターに乗り込む。
持ち前の早さで地上階に着き、真っ直ぐ外に出る。
冷えた空気が肌を撫でるのを口笛ひとつでやり過ごす。

青空を見上げ、気の向くままに舗装された道を歩く。
奇しくも学園へ行くのと同じ道を通っていて、引き返そうとした。
が、ふと木の陰に隠れるように道があるのを見つけた。
未知の場所へ行かなければ散歩の意味がないと理由をつけて、迷わず入った。