最上階に部屋を持つ二人とはエレベーターで別れた。
風紀委員会の仕事については、明日の放課後に説明してくれるそうだ。
寮室の戸を開けると、そこには電気も点けず仁王立ちしている優希がいた。

「わざわざ出迎えご苦労だな。ほら」

「ちげーよ! 遅かったから待ってやったんだ」

とか言いながら、私の差し出した鞄を受け取るのだから、根はいい奴だ。
彼は私に背を向け、ずんずん歩いていく。

「お前が帰ってこないから、食堂に行けないんだよ」

なんて吐き捨てながら。

その背が共同スペースの戸に消えたところで笑いが溢れた。
心配してたならそう言えばいいのに、素直じゃない。

食堂に一緒に行く約束をした覚えはない。
なのにわざわざ、こんな理由を作って待っていてくれた。

ここに来る前は、両親とも仕事で家に帰ってくることがなく、いつも独りだった。
だから、こんな些細なことが嬉しくて堪らない。

気分よく優希の消えた共同スペースの戸を開く。
彼はがばりとこちらを向いた。