「あれが副風紀委員長の灰原李白(かいはらりはく)。李白、この人は……」

「天花寺麗だ」

光紀の言葉を遮って名乗ると、李白は眉をしかめる。

「そんな名前、聞いたことない。………光紀、本当に信用できるのか?」

李白の反応に光紀は肩をふるわせた。
もういいかと判断して、私はカツラを外してテーブルに置く。
地毛を手ぐしで整えてから李白を見れば、目を見開いている姿があった。

「私だよ、シロ。驚いたかい?」

「レイ……?」

「いやほんと、髪型変えるとわかんないもんだな」

「それより、何でレイがここに……」

入り口付近に突っ立ったままの李白を手招きして、光紀の隣を指す。
意図を読み取った彼はおとなしく従う。

私は光紀にしたのと同じ説明を李白にした。
それと、私がこの学園にいる間、風紀委員をするつもりである、とも。

話し終えた時には、李白はぼんやりした表情を輝かせていた。

「レイがいるの、嬉しい…」

李白の後ろに、犬の尻尾がぶんぶんと振られている幻が見えた。
彼は忠犬なのだ。
チームの皆は彼を大型犬だと認識している。
特定の者だけに懐くかわいい奴。

久しぶりの仲間との再会を喜ぶ間もなく、完全下校を知らせるチャイムが鳴った。

「さて、寮に帰るか」

言葉とともに立ち上がった光紀。
私と李白もそれに倣う。
先を行く光紀について、風紀委員室をあとにした。