云えないコトノハ

光紀の提案に少し考えて。

「……やめておくよ。私はともかく、玲が出来るとは思えない」

風紀委員会に入れば乱闘もありうる。
玲が戻った時に不利益が生じるようなことは避けたい。

「光紀は親衛隊がつくほど人気だと聞いた。ならば、わざわざ外部の私でなくとも向こうから勝手に寄ってくるのではないか?」

「確かにいっぱい来たさ。けど、使えない奴ばっかりだ」

「光紀の評価が厳しすぎるんだろう」

「そんなわけあるかよ。面接で風紀に入りたい理由を訊けば『生徒会の皆様とお近づきになりたいー』とか『委員長様と副委員長様のお傍にいたいー』だ。そこは嘘でも学校に貢献したいとか答えるところだろ!」

「限りなく素直な子たちだな」

「9割はそこで落として、合格した1割に1週間の仮採用期間を設けたんだが、ある奴はずっとお茶ばかり持ってきやがるんだ」

「たまには違う味のものが飲みたくなるな」

「…違うんだ。5分置きに緑茶、紅茶、抹茶、昆布茶、玄米茶、とにかくいろいろ持って来やがる。まれに口つけたら美味いかしつこく訊いてきやがるし、仕事しろっていえば『ぼく、飲み物いれるの得意なんですー』って、どうでもいい!」

声色を変え、身振り手振りで全身で訴えかけてくる光紀。
彼の話はまだ続く。

見回りに行かせたら、善良な一般生徒を捕まえて風紀の名を使って命令した。
強姦から助けたお礼だと言って、被害者の生徒を襲ったバカが居た。
光紀と副委員長の指示は聞くが、他の委員の指示を無視する奴。

他にもいろいろ聴かされた。

途中、変なものが混じっていた気がするが。
疑って悪かった、皆役立たずだ。

「そういうわけだから、ぜひ風紀に入って欲しいんだ」

縋るような目を向けてくる光紀に頷けば、途端ほっとした表情になる。

私は鬼ではない。
仲間の頼みなら聞いてやりたいと思う。

あまりの酷さに同情もしたことだしな。

「ただし」