「達富は残れ。松本(まつもと)、由良(ゆら)を送っていけ。そのまま直帰でいい」

「はい」

近くの机でパソコンを打っていた人が立ち上がり、少年を連れて風紀委員室から出ていく。
静まりかえった室内に、私と風紀委員長だけとなった。

「久しいな、コウ」

「言い逃れは許さないぞ、ちゃんと説明してもらうからな」

風紀委員長の厳しい物言いに、私はやれやれと肩をすくめた。

さりげなく逃げるつもりだったが、そうはさせつてもらえないらしい。
まあ彼は信頼できる奴だ。
既にばれているので、躊躇う必要もない。

「身代わりだよ、達富玲の」

言うと、風紀委員長は盛大な溜め息をついた。

「私と玲はいとこでね。外見が瓜二つだったから、引き受けた」

かわいいいとこの為だ。
たとえ似ていなくとも、何らかの手段を用いて影武者になったさ。

先手を取って、彼が聞きたいだろうことを告げる。

「何故、俺達にその事を言わなかったんだ?」

「この事は誰からも隠すつもりでいたからね。第一、コウがこの学校に居たなんて知らなかったよ」

「俺だけじゃない、シロもいる」

「………それは驚いた」

表情を伴わない私の発言は信用がない。
にもかかわらず、不快にならず笑っていられるのは、互いをよく知る仲だからだ。

今朝、優希から話を聞いてもしやと思ったことは黙っておく。

「ま、お互い知らないのが普通か」

「規則だからな」