生徒は突き飛ばされただけで、私は無傷。
返り討ちにあったといえばそれまでだが、偉そうな仁王立ち生徒に命令されてたからな。

「……あいつら、誰にやられたんだ?」

「達富君がやっつけたんだよ! すっごくかっこよかったんだから!」

風紀委員長の問いに答えたのは生徒。
さっきまで怯えていたのが嘘のように誇らしげに言う。

「嘘だろ……」

風紀委員長は私の体を上から下まで見る。

玲に男たちを叩きのめすほどの力はない。
だが、玲と同じ外見で男たちを返り討ちに出来るほどの力を持つ者を風紀委員長は知っている。

彼は、信じられないという顔で呟いた。
否、思わず声が漏れた、と言った方が近い。

「………レイ、か?」

その声に応えるように私は苦笑を返した。

「どういうことだ……?」

理解が追い付かないらしい風紀委員長の後方から、二人の生徒が走ってこちらに向かってくるのが見える。
いずれも風紀の腕章をつけていて、増援であろうことが窺えた。

「とりあえず、僕たちは風紀委員室に連行されるんでしょうか」

何も言わない風紀委員長に問いかければ、ゆっくりした頷きだけが返された。