云えないコトノハ

少しぼんやりしている彼を置いて立ち上がり、いじめッ子達に向き直る。
視線が交錯したのを合図に、私と体つきのいい二人が地を蹴った。

飛んできた拳をいなし、手首を掴んでもう一人の方に投げる。
二人はぶつかり、その衝撃で砂埃を上げて飛んでいく。

倒れた先では、二人が気絶していることが見てとれた。

本当に、すぐ終わった。
仕方ない、相手が弱すぎる。

「さて」

パンパンと手を払いながら、この一件の首謀者であろう仁王立ちの生徒に視線をやる。

「僕(しもべ)は居なくなったが、君はどうする?」

「……っ、お、覚えてろー!」

彼は悪役の使い古された捨て台詞を叫び、背を向けて全力疾走。
その走りは歩きたての子どものように覚束なく……。

「きゃっ!」

「……」

転けた。
自力で立ち上がり、よろよろと歩く背中が見えなくなったところで、後ろから声をかけられた。

「あの……」

「何ですか」

玲の顔で振り返ると、ぺたんと座る彼は目を泳がせている。

私は正面にしゃがんで、彼の両頬を掌で包む。
逃がさないとばかりに、強引に顔を持ち上げ目を合わせる。

「いっ……!」

彼は顔をしかめたが、気にせず目を見続ける。
暫くすると、観念したように口を開いた。