云えないコトノハ

「……どーも」

おざなりに挨拶をすると、彼の顔は驚愕の色に染まった。

「達富、玲…?」

「なにっ!?」

「こいつが!?」

目の前の彼の呟きに、両脇にいた体格の良い生徒達が反応する。

「達富玲は激弱じゃなかったのかよ!」

「約束が違ぇぞ!」

「そんなの、ボクだって知らないよっ」

彼らが何故か内輪揉めを始めたことで、意識から外れた私は振り向き、倒れている生徒と目線を合わせる。

「大丈夫ですか」

「そんなわけ、ないでしょ……」

間髪入れず、弱々しい声が返ってきた。
応える元気があるなら大丈夫だろう。

「立てますか? 保健室に行きましょう。送りますよ」

腰を落としたまま手を差し伸べれば、後ろの方でヒステリックに叫ばれた。

「とにかく、早く達富玲を痛い目にあわせればいいの!」

金切り声をあげられて、耳が痛い。
この学校の小さい奴は、皆こうなのだろうか。

「すぐ終わる」

私は差し出した手を持ち上げて、怯える彼の頭をぽんぽんと撫でた。