云えないコトノハ

小柄な生徒が二人。
一人は仁王立ちで、一人は地面に手をついて倒れている。
仁王立ちしている生徒の後ろに体つきのいい生徒が三人、控えるようにして立っていた。

「あんたこれから何されるか、わかってるよね」

仁王立ちしている生徒の呟きに、倒れている生徒は顔を青くさせる。

「黄金井朔弥様親衛隊規則第十二条第三項、任務に失敗したら制裁。あんたたち、やっちゃって!」

その言葉を合図に、体つきのいい生徒が倒れている生徒に襲いかかった。

まずい。

私は傍観することを辞め、そこに向かって走る。
一人の男が手を上げたのと同時に強く地を蹴り、彼の顔面をローファーの底で踏みつけた。

「あぐっ……」

それは、うめき声をあげて受け身もとらず倒れる。
同時に私は片膝をついて、ひらりと着地した。

「だっ、誰だ!」

仲間が一人やられて動揺しているのか、腰が引けている。
そのくせ強がって、まるで下っ端の悪役だな。
………実際そうなのだろうが。
今日だけで、二回も同じような現場を見ることになるなんて。

「この学校では、寄って集って、弱い者いじめが流行っているのかな」

立ち上がって、膝についた土を払い落とす。
ある程度落ちたところで体を起こすと、仁王立ちしていた生徒と目があった。
瞬間、彼の肩がビクッと跳ねる。