無言で促されるままにそこに乗り込めば、彼は扉を閉め、運転席に乗り込む。
そして静かに車を走らせた。

「車内での飲食は?」

「かまいませんよ」

了承をとってから備え付けのストローをパックの穴に差し込む。
吸えば、百パーセント特有の濃い味が口のなかいっぱいに広がり、水分の少なかった口内を潤した。

「貴方は玲の頼みを知ってる?」

ふと浮かんだ、私がおとなしくこの車に乗り込むに至った理由を問いかける。

「いいえ、何も伺っておりません」

「そう……」

ここで会話は途切れた。
知らないなら会って本人に聞くまでだ。

話がしたいわけでもないし、彼には運転に集中してもらわなければならないから、それでかまわない。
車窓から流れる景色を見ていると、疑問に思ったことがある。

「この車はどこへむかっているの?」

見慣れない風景で戸惑いを覚えたのだ。
てっきり叔父の家へ行くものだとばかり思っていたから。