云えないコトノハ

下手な授業をした罰として、優希一人に大量の課題が出されている。

どうあっても、優希を連れていく気はない。
それに気付いたのか、彼は舌打ちをした。

「何かあったら連絡寄越せ」

それだけ言って、優希は教室を離れていく。
足音が完全に消え、静かになった教室で、私は肩にかけたままの鞄から白い封筒を取り出す。
中身の白い便箋に書かれている文字は相変わらず。

「…体育館裏倉庫。とりあえず、体育館の方に行ってみるか」

なんたって『体育館裏』だからな。
教室を出て、数歩進み、ふと気付く。

「………体育館って、どこだ?」

こんなことなら帰らせる前に優希に聞いておけばよかったか。
まあいい、歩けばそのうち見付かるだろう。

外に出て歩くこと十数分。
これでもかというくらい無駄に大きい校舎の外壁に沿って進んでいた私は、かすかに人の声を聞いた。

丁度いい、体育館の場所を教えてもらおう。

声を頼りに歩いていくと、それが複数あることが判る。
だが、あからさまに様子がおかしい。

「この役立たず!」

「きゃっ!」

どん、ずざーっ。

内容まで、はっきり聞き取れるようになった。
音から判断して、強く押されてこけたのだろう。

建物の陰に身を隠し、様子を窺う。