放課後の始まりを告げる鐘が鳴り、教師が教室を出て行った。
授業の終わった開放感から穏やかな空間となったそこに、一人の生徒の怒号が響く。

「貴様ァ、よくも俺を売りやがったな!」

彼、赤江優希の額には青筋が浮かび、相当怒っていることが窺える。

「売ったなんて、人聞きの悪い事を……」

「お前のせいで恥かいたじゃねぇか!」

「そうとは思えないほどに堂々としていたよ」

ぐちぐちと小言を言ってくる優希に言葉を返せば、うるせーと一蹴された。

彼はただ鬱憤を晴らしたいだけで、私の意見は求めていないらしい。
傍迷惑だ。

「ははっ、赤江も災難だったな」

私と優希の会話を聞いていたのだろう、弘海が笑い混じりに話しかけてきた。

「なんで、俺だけ…」

うなだれる優希に沙貴が意見する。

「自業自得でしょ。それに、久しぶりに来た玲君にさせるなんて、悪い教師がすることだよ」

「お前らは、朝の授業で玲が教師を負かしたのを忘れたのか」

「あれって、赤江君が解いたのを玲君に答えさせたんでしょ? みんな知ってるよ」

「だから教師に目をつけられている。気をつけろよ」

「もう手遅れだがな」

沙貴の言葉に加え、弘海と私の追い討ちで、優希はとうとう机に突っ伏した。